【Story】これまでの軌跡と挑戦をまとめました。
「自然本来の循環を生み出す」―JUURI SAUNA、離島の森からはじまる挑戦
JUURI(ユーリ)とは、フィンランド語で「根っこ、根源」を意味します。
宮城県女川町の離島・出島(いずしま)で、私はこの名を掲げた貸切サウナ「JUURI SAUNA」を運営しています。
森と海に囲まれたこの島で、自然に寄り添いながら“ととのう”時間を届けたい。そんな思いが、JUURI SAUNAの出発点でした。
ここで過ごす体験の背景には、森の再生と、自然本来の循環を見つめる取り組みがあります。
この記事では、JUURI SAUNAがどのような思いから生まれ、どんな歩みを続けているのかをご紹介します。

豊かな海が失われていく―故郷の危機感が、すべての始まり
私の“根っこ”には、海で育った記憶があります。
宮城県の沿岸部でタコの卸売を営む家庭に生まれ、幼い頃からずっと海とともに暮らしてきました。
ある時期から、両親が「タコが獲れなくなってきた」と口にするようになり、故郷の海に起きている“異変”をはっきりと感じるようになりました。
前職で海洋環境の調査に携わった経験も重なり、「いつか海を良くしたい」という思いは、次第に確かな使命へと変わっていきました。
原点は「海」―だが、たどり着いたのは「森」
豊かな海を取り戻すには、何が必要なのか。行き着いた答えは、「海を良くするには、まず森を良くする」 という、ごくシンプルな事実でした。
豊かな漁場は、森から流れ出る栄養によって育まれる。海の問題の“根っこ”は、森にある―。その気づきこそが、JUURI SAUNAの原点であり、今につながる使命の始まりでした。

舞台は、人口92名の離島・出島
その使命を実現する場所として出会ったのが、宮城県女川町の離島・出島(いずしま)です。
東日本大震災からの復興のあり方に共感し、以前から女川町に惹かれていたこともあり、その縁で紹介されたのが、この島でした。
訪れてみると、そこには自販機が1台だけ。 けれど、その“何もない”ことが、とてつもなく贅沢に感じられました。
この島にある、手つかずの森という「課題」と、”何もない”静けさそのものが持つ「価値」。この両方が、JUURI SAUNAの挑戦を支える土台となっています。

枯れた沢に、水が戻り始める―サウナの"火"が、森の"循環"へとつながっていく
出島に残された「手つかずの森」という課題に向き合い、JUURI SAUNAが選んだのは、森の仕組みに寄り添う、とてもシンプルな循環でした。
| JUURI SAUNAが紡ぐ「森の循環」 1. 間伐 -光を森へ 長く手入れされてこなかった杉林の木を間引き、森の奥まで光が届く環境をつくります。下草や低木が育つ環境を取り戻します。 2. 活用 -木をサウナへ 間伐した杉は、サウナの建材として、またサウナストーブを温めるための「薪」として、余すことなく活用します。 3. 帰還 -灰を土壌へ 薪を燃やした後の「灰」は、森の土壌を改善するための肥料として、森に撒かれます。 4. 再生 -森から海へ 光が差し、土壌が豊かになることで、森の保水力や多様性が回復します。豊かな森が育んだ栄養が、やがて海へと注がれていきます。 |

"ととのう人"が循環をつくる
JUURI SAUNAが紡ぐ循環は、森を整え、木を活かし、灰を森へ返す─、そんな自然の仕組みに寄り添った、静かな営みから始まります。
しかし、その循環を 動かし続ける存在 は、島を訪れ、サウナに入り、火をつける「人」です。ととのう体験を求めて火を焚くこと。その自然な行為が、結果として森の再生を助け、海へとつながる“循環”の一部になっていきます。
JUURI SAUNAにとって「最高のサウナ体験」と「自然の循環」 は、決して別々のミッションではありません。まずは、自分が心から“気持ちいい”と思えるサウナをつくること。 その体験を最大化すること。
ととのうという体験そのものが、島の自然を守り、未来へつなぐ“根っこ”になっていく。訪れる「人」こそが、JUURI SAUNAが描く循環を完成させる最後のピースなのです。
取り組みを始めて約1年。かつて枯れていた沢に、少しずつ水が戻りはじめました。小さな兆しではありますが、確かな手応えを感じています。

JUURI SAUNAで過ごす時間
JUURI SAUNAが大切にしているのは、「深く、ととのう」体験です。
スモークサウナの香りや、やわらかな蒸気浴に身をゆだねる時間。その心地よさの裏側には、森と海に寄り添う営みがあります。
ここでは、その体験を支えるJUURI SAUNAならではの特徴 をご紹介します。
- 放置林の間伐材を建材や薪に、薪から出る灰は土壌改善に
管理が行き届いていない杉林を間伐し、建材やサウナストーブの薪として活用しています。間伐により太陽光が下層の植生まで届き、成長を促すだけでなく、薪を燃やした後の灰を森に撒くことで土壌を整える取り組みを続けています。

- フィンランドの伝統的な蓄熱式ストーブ
日本では貴重な、フィンランドのNarvi(ナルヴィ)社製の伝統的なサウナストーブ「Aitokiuas-95(アイトキウアス)」を採用しています。約12〜16時間ストーンの余熱だけでサウナを楽しむことができ、フィンランドのスモークサウナのような蒸気浴体験を再現します。

- 海を眺め、森林浴をしながら行う外気浴
サウナの目の前に、海が見えるデッキを用意しています。海を眺めながら、森の中で自然の音に耳を澄ませ、ゆっくりと‶ととのう”ことができる環境です。

- 島から汲み上げた地下水で入る、醤油樽の水風呂
宮城県内で使われていた醤油樽を水風呂として再利用するほか、漁師が海産物を運搬・保管するために使うコンテナも活用しています。サウナに欠かせない水は島の井戸水を使用しています。

- メキシカンタコスなど、こだわりのサ飯
自家製のタコスや出島近海で獲れたタコを使用したタコ飯など、様々なサ飯をご提供しています。

体験は、森へひらいていく
JUURI SAUNAが見つめるのは、より深く、確かな「ととのい」です。その一歩として、森を歩き、木に触れ、薪を割る─、サウナを支える営みにふれる体験を、オプションツアーとして計画しています。
出島という土地で息づく営みに触れることで、サウナ体験はゆっくりと奥行きを帯びていきます。
そこで過ごすひとときが、森の循環へ自然につながっていく。
取り組みを続ける中で見えてきた小さな変化のその先に、この沢がふたたび水を湛える姿を思い描きながら、私は森と向き合い続けています。
JUURI SAUNAはこれからも、サウナを起点に、森と海、そして人を静かにつなぎ、その循環を育てていきます。

- 公式サイト https://juurisauna.com/
- 公式Instagram https://www.instagram.com/juuri_sauna/